医学論文解説 〜Toshi's Lab ジャーナルクラブ報告

第4回「PPARγは破骨細胞の形成を制御する」

Nature Medicine 13, 1496 - 1503 (2007)
PPARγは破骨細胞の形成を制御する
Wan Y, Chong LW, Evans RM (アメリカ / ソーク研究所)

骨は硬い組織ですので一度出来上がればそのままと思われがちですが、からだのほかの組織と同じように常に新陳代謝を繰り返している動的な組織です。丈夫な骨は、「破骨細胞」という骨を壊す働きをする細胞が古い骨を壊し、その壊された場所で「骨芽細胞」という骨を作る働きをする細胞が新しい骨を作ることによって保たれています。
これを「骨リモデリング」と呼びますが、この破骨細胞と骨芽細胞の働きのバランスが崩れてしまうと骨粗鬆症などの疾患が発症してしまいます。閉経後の女性が骨粗鬆症になりやすいというのは、女性ホルモンが閉経によってなくなることにより破骨細胞の働きが活発になってしまうためなのです。

PPARγは私たちのからだの中で脂肪細胞を作る働きや筋肉でのグルコースの取り込みを活発にする働きを持つ分子ですが、最近の研究からPPARγがそれだけではなく、骨芽細胞を作りにくくする働きも持つことがわかってきました。
PPARγの働きを活発にする薬を服用している糖尿病の患者さんは骨が脆くなって骨折しやすくなってしまうという報告もされていることから、PPARγが骨リモデリングにどのように関わっているかを明らかにすることが急がれています。
しかしながら、残念なことにPPARγが破骨細胞に対してどのように関わっているかはこれまであまりわかっていませんでした。

そこで著者らは今回、骨芽細胞にはPPARγがあるが破骨細胞にはPPARγがないマウスを作り、このマウスを使って破骨細胞でのPPARγの働きを調べました。その結果、このマウスは骨の量が増える「骨大理石病」という疾患になることがわかりました。
ではなぜこのマウスが骨大理石病になったかを詳しく調べていくと、破骨細胞にPPARγがないことで、破骨細胞それ自体ができにくくなっていることがわかりました。
つまり、このマウスは骨を壊す破骨細胞が作られないために骨が壊されなくなり、結果として骨の量が増える骨大理石病になってしまっていたのです。破骨細胞にPPARγがないマウスで破骨細胞が作られなくなってしまったことを逆に考えれば、PPARγは破骨細胞を作りやすくする働きがあるといえます。
ですからPPARγの働きを活発にする薬を服用している糖尿病の患者さんでは、破骨細胞が多く作られることにより骨を壊す働きが増えてしまい、その結果、骨が脆くなってしまったことが考えられます。

このように今回の論文からPPARγが骨芽細胞を作りにくくする働きだけでなく破骨細胞を作りやすくするという新たしい働きを持つことが明らかとなりました。
PPARγの働きを活発にする薬や、逆にPPARγの働きを抑える薬などがありますので、こういった薬をどのように使用していくかをよく考えることが今後の課題といえるのではないでしょうか。

要約:Toshi's Lab ジャーナルクラブ 八木下 尚子

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