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医学論文解説 〜Toshi's Lab ジャーナルクラブ報告

第7回「制御性T細胞のマスター遺伝子Foxp3遺伝子の
発現制御機構の解析」

Nat. Immunol. 2008 9, 194-202
Nat. Immunol. 2008 9, 245-53

我々の体では、感染性微生物やウイルスなど「非自己」が体内に入りこんできた場合、それらを認識して攻撃・除去する免疫という機構を備えています。実際の免疫では、T細胞やB細胞と呼ばれる細胞たちが、自分の体の細胞(「自己」)と「非自己」を識別して攻撃・除去しています。この免疫の大きな特徴の一つが、「自己」に対しては攻撃・除去しないこと(免疫寛容)にあります。

免疫寛容のメカニズムとして、「自己」に対して攻撃・除去してしまうT細胞は体内から除去され、「自己」に対して応答しないT細胞が体内に存在すると考えられてきました。しかしながら、最近の研究により、我々の体の中には、「自己」に対して攻撃・除去する能力を持つT細胞が多数存在していることが明らかとされてきました。そこで登場したのが「制御性T細胞」です。

「制御性T細胞」は、「自己」に対して攻撃・除去してしまうT細胞を抑制する機能を持ちます。すなわち、自己免疫病やアレルギーといった過剰な免疫反応を抑制し、正常な免疫機能の維持に機能する必要不可欠な細胞と考えられます。近年の研究から、「制御性T細胞」はFoxp3遺伝子が未熟なT細胞で活性化されることによりできて(分化して)くることがわかってきました。つまり、Foxp3遺伝子の活性化が「制御性T細胞」ができるのに重要と考えられます。しかしながら、Foxp3遺伝子の活性化を調節する分子メカニズムについてはほとんど明らかではありませんでした。

今回紹介します論文では、マスター遺伝子であるFoxp3遺伝子のゲノム構造の詳細を明らかにしました。さらに、この遺伝子を活性化するタンパク質(転写因子)を同定し、かつ、その転写因子がFoxp3遺伝子の活性化に重要であることを実験的に証明しました。これらの結果は、Foxp3遺伝子の活性化を調節する分子メカニズムを明らかとし、「制御性T細胞」ができる仕組みの一端を解明しました。まだ多くの不明な点や謎が残ったままですが、以上の結果は、「制御性T細胞」を操作する方法の開発につながり、その結果、免疫疾患やがんに対する新しい治療法につながると期待されています。

要約:Toshi's Lab ジャーナルクラブ 藤田英俊

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